Setting into life in here. Part 1
- 関根 優実
- 2023年6月21日
- 読了時間: 2分
2023-03-13
ついにこの日がやってきた。2回に分けて行う引っ越しの1回目。家族に協力してもらいながら車にどんどこ荷物を運ぶ。助手席には額まで手作りした絵を置き、丁寧にシートベルトまでした。あいにくの天気だったが気持ちは晴れやかだった。まるで楽しみにしていた遠足当日の朝のよう。
大雨は霧を生んで視界を遮っていた。ワイパーを一番強く設定して、目を凝らした。多くのトンネルが次から次へと顔を出す厄介道。トンネル道も、そうでない道も、本当にうまい具合に短過ぎず、長過ぎずなデザインで私はワイパーを付けたり消したり忙しかった。後ろから木と金属がカチャンカチャンと当たる音がする。きっと机の脚と画材入れが喧嘩してるんだろうなと思った。次のSAで配置を変えようと頭の中で計画する。旅のお供はホットコーヒーとミルクチョコだけで機嫌をとった。音楽に飽きたらポットキャストを聞いた。人の話し声は何故こうも心を落ち着かせる事ができるのだろう。一人でラジオを聴いていると、まるで一緒に話しているような感覚に陥る。
長いトンネルに入った。ワイパーを切り、チョコを口に入れる。ふと気づくとラジオの内容を全く追えていない自分に気づいた。私はその時急にとんでもない不安で胸がいっぱいになった。
これからどうしていこう。家族と離れ、仕事を辞め、たくさんの大切なコミュニティーから遠い場所へ来てしまった。今この鉄の塊の中一人将来について考えている。フロントガラスが大粒のドット柄にプリントされたので、ワイパーをつけ、目を凝らした。
雨はさらに強くなって、ラジオの音がますます聞こえない。耳が忙しいので音を消したけれど、騒がしさは消えなかった。
2023.06.23
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