『陽気なおじさん』
- 関根 優実
- 2021年5月7日
- 読了時間: 2分
更新日:2023年6月22日
古着にハマりだしたのは高校2年の夏。学校帰りに栄に繰り出し古着屋を潰し歩いた。ファストファッションへの嫌悪感を抱いていたのも1つの理由だが何と言っても一着づつが持つ顔とバックグラウンドをシミつけた容貌に虜になった。当時の私にとって、彼らは決して手に取りやすい値では無かった。
諦めかけているとなんとも絶妙な場所に1つ、トランクが置いてある。今思えばまんまと店の人の思惑に引っかかった都合のいい客だった。(コンビニのレジ横のまんじゅう、イケアのレジ周辺のぬいぐるみ、ミスドのポンデリングのそれ。)
トランクの中ではバライティーに富んだスカーフ達が鬩ぎ合っていた。溢れんばかりのスカーフは1つ1つキャンディーのように結ばれていた。そして彼らは比較的安価だった。これなら私にも手が届く。
私はリビングコーラル色のスカーフに一目惚れ。色は勿論その柄を見るやいなやレジに持っていった。かわいい自転車に陽気なおじさんが乗っている絵だ。おじさんは12人ほどプリントされている。なんとそれぞれおじさんのディティールが変えてある。なんて陽気で楽しいんだろう。
会社を辞めて昼間のアルコールを始めたおじさんや、パートナーと喧嘩して家に居ずらくなりサイクリングに出かけたおじさん、甘いものを買いにシャトレーゼに行く最中のおじさんなど。(勿論、私の妄想)
どこに行くのも一緒だった。バックにつけて時にはスカーフとして夏も冬も一緒だった。そんな陽気なおじさんが私から去ったのは高3の冬。国立新美術館からの帰りだったと思う。おじさんは戻らなかった。
今でも思い出して悲しくなる無くし物。
人それぞれ思い出すと悲しくなる無くし物があるんだろうな。もしかしたらそれはまだ無くし物ではなく、探し物かも。時が経ち無くし物になった探し物、愉快なおじさんでした。
Thank you for reading.
p.s. カバー画像は文とは無関係です😉
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